今から20年以上前に、長岡歯車資料館の内山館長を訪ねた際に沢山の歯車のことを教えていただいた。
歯車はいつからあったのか?の私のあまりに漠然とした質問に内山館長は嫌な顔ひとつ見せずこう答えて下さった。「歯車がいつ、誰の手によって発明されたのかは、はっきりとはわかっていません。しかし起源前にまで遡ることは間違いないようですよ。
今もエジプトのナイル地方を訪ねると垂直の車輪に幾つかの壺を付け、歯車を介し車輪を回し水を汲み上げる”サキヤ”という壺車があるそうです。
このような揚水車(水を下から上に運ぶ機能を果たす車)が使われるようになったのは紀元前600年前頃だったと言われています。
歯車の最初はこのような水汲みに利用した木製のものではなかったか?と私は思っているのですよ。」
なるほどと当時の私は今以上に歯車のことを知らなかったので、ただただ館長の話に聞き入るばかりでした。次に「指南車」についてもお話をして下さったので、それにも触れておきたいと思います。
「中国で指南車が発明されたのも、やはり紀元前のことだったと推測されているんですよ。指南車とは歯車仕掛で車上のの仙人のカタチをした人形が常にその腕(指)を南に指すように工夫されたものです。
その当時の中国では、皇帝が出かけるときに、この指南車が行列を先導したそうです。ところがこの指南車の機械仕掛けについですが、長い間、方角を示すのだから磁石が使われていたと考えられていたようです。
その後の研究の結果から、歯車仕掛けだったというのが定説になりました。なぜ磁石でなく、歯車だったのか?それはね。指南車は幾つもの種類が作られていて、大きなものでは、
人間が50人も乗れるものまであったと言われますし、日本にも斉明天皇の時代に製作されたという記録が残っています。あれだけの大きさのあるものを磁石ではとても動かすことは
できないでしょ。だからやはり歯車を使っていたはずです。ちなみに指南役という言葉の語源になっています。」 MOLEN *長岡歯車資料館のHPはこちら → http://nagaha.net/?page_id=1653 A description of shinansha is also seen in " Sangokushi " ( Annals of the Three Kingdoms ) .